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製図用のインクの香り、原稿や資料紙の香り。
一時の休憩の共にと愛飲する珈琲か、或いは紅茶の香り。
これが僕が日常的に嗅いでいる匂いだが、今日はいつになく珍しい香りが
両手の平の間に強く漂っていた

「つめっ…~ツメてぇー…//;!」

「あと2枚だ、我慢しろ」


広い背中にバランスの良い美しい筋肉、しかし腰に貼られた二枚の冷湿布が
若干の間抜けさを醸し出している、まぁ…僕が貼ってやったものだがな。
平日の放課後、僕が仕事終わりのFAXを送信していると、
突然けたたましく訪問を知らせるチャイムが家中に鳴り響いた。
普段より妙にハッキリと聞こえたベルに何事かと急ぎ足で玄関へ向かうと、
そこにはいつもの三人組の姿…しかし、一目で様子が変だと分かった。
大半僕の家に来る時は上機嫌の仗助の表情が今日はとても不機嫌そうで顔色も良くはない。
それ以前に何故、コイツは億泰に肩を貸されているんだろうか…
一体何があったのかと言いたげな僕の口より早く、三人分のカバンを抱えた康一君が
申し訳なさそうに事情を説明してくれたのだ。


「しっかし情けねぇーのぉ~…俺まだ16っスよ…;」

「年齢は関係無いだろう」

「人より筋肉ある方だと思うしよぉ~…」

「筋肉があったって、なっちまう時はなっちまうんだよ…オイ、動くな」


康一君の話によると、普段と変わりなく三人で下校してバスに乗っての帰り道。
いつもより無口な仗助に違和感を覚え、何かあったのかと訪ねてみても
『なんでも無い』の一点張りで答えてはもらえ無かったらしい…が、不意に落としたカバンを
拾い上げようとした仗助が一定の位置まで身体を伸ばしたまま動かなくなってしまったらしい。
ははぁ~ん、もしかして…と感のイイ康一君の計らいで、こうして僕の家まで運んで来たのだという。


「それで…いつから我慢してたんだ、このギックリ腰」

「今日の昼休みあたりぃ…いッ!!…っス…//;」


三枚目のセロファンを剥がし、今度は背骨付近にシートを貼り下ろすと
冷たさと痛みからか小さく悲鳴を上げた仗助は観念したように話始めた。


「5時限目の教材運んどけってセンセーに言われて、資料室から荷物取って来たんスよ。
別に持てない重さでも無かっし、楽勝~とか思ってたら積んでた資料落っこどしてぇ…」

「荷物持ったまま拾おうとしたってワケか…不精者。」


最後の一枚を貼り終え、剥がしたセロハンを丸めながら僕が答えると
仗助は上向きの横顔を指で掻いて苦笑いをみせた。


「ビンゴー…まさか見てたんスか…//;?」

「状況から推理すれば簡単に想像のつく展開だろう」


溜息は僕の方だ、注意力が足らないというか危なっかしい…。
決して頭が悪いわけではない筈なのに、どことなくコイツは抜けている。
お前を運んで来てくれた康一君に億泰の気遣いにも気が付いているんだろうか、
いつもより良く聞こえたチャイム音…恐らく康一君はスタンドまで使って
気が付かないかもしれない僕に事を知らせてくれたんだろうな。
しかも、さっさと気を使って退散してっちまったし…いい友達だな、色んな意味で。


「老若男女関係無く、屈強な身体をした奴だろうが一流のスポーツマンだろうが無関係な話じゃあ無いんだ。
疲労が蓄積していたり、無理な体勢やバランスを崩した拍子に痛める事だって珍しくないモンなんだよ」

「へぇ~…そうなんだ」

どっち付かずの返事をする仗助に脱いだTシャツを差し出すと、我慢していた訳でもないが小さく溜息を吐いた。
おもい…自分で理解しているつもりだった話なのに、いざ目の前にしてみると胸がズンと重い痛みを感じていた。
人の傷はいとも簡単に治してみせるのに、仗助自身の身体は傷だらけ、数々の戦いで負った傷も
塞がってはいるが痕は痛々しい程目立つ。
己を顧みず、『守る』という信念のもとに我が身を危険へ投じる事も厭わないなんざぁ
まるで聖人のようだな…さしずめ、この傷は聖痕?馬鹿を言うんじゃ無い。
そんな事、何だかとても不公平じゃあないか…。


「露伴…露伴?」

仗助の呼び声に我に返ると、視線だけで微笑む仗助と目が合って気が付いた。
僕の手の平には微かに脈打つ感覚と、自分のものとは別の温もり…
まるで湿布で冷えた僕の手へ、仗助の体温を分けてもらうかのように
無意識のうちに目の前の背中に触れていたのだ。


「Tシャツ着ちまうから…いったん手、退けてもらえる?」

「あ、あぁ…」


言われるままに僕が手を離すと、仗助は患部を庇うようにTシャツを被り着ると
両手で髪型が乱れていないかチェックしつつ微調整している。
コイツはいつだってこんな調子だ、こちらの気持ちなど知りもしない…
ふと見下ろした自分の手の平にまだ触れていたいと名残惜しさを覚えていた。
治療したのは僕だというのに、どこも怪我などしてやしないのに…
とても胸が痛い…思わず涙が溢れそうだ。


「そんな顔すんなって、露伴」

その言葉より早く、僕の腕が引かれたかと思えば
そのまま仗助の膝の上に倒されてしまった。

「お前は心底バカかっ…今治療してやったのに、これじゃ何の意味も無いだろうっ!!」

「大丈夫っスよ、露伴軽いし…//」


僕を覗き込む仗助の顔は、満足げに微笑んでいて
溢れそうになっていた涙が引いて行く気がした。
長い睫毛が瞬きする度に微かに影を落としながら揺れる様は
ベッドで見上げる顔よりも色気があるように思えた。

「これからはちゃんと気をつけるっス…露伴に心配はかけられねぇーもん」

「そうして貰えると僕も有難いね…余計な考え事はしたくない。」


もどかしい空気の中で笑ってみせる顔に、お前で僕の中がいっぱいになっていく。
これ以上想わせてどうするつもりなんだ…。
そっと伸ばした手で、仗助の頬に触れれば柔らかい温もりが伝わってくる。
不安が解きほぐされる体温に、言いたいことの半分も言えなくなった僕は
平気なフリを装って上半身を持ち上げ、ゆっくりと仗助の唇にキスをした。


「早く治せよ」

僕の全てを埋めていく、この男はズルイ。



*終*

―――――――――――――

後書

お付き合い中の仗露でした。
好奇心を満たすためなら危険を問わない露伴先生
守ると決めたら己を犠牲にすることも問わない仗助君
危なっかしい二人ですね…。

お付き合いを初めて、少しでも自分を大切にして欲しいと互いで思う中、
痛いとか、弱い部分も見せ会える仲だったら私は幸せです。

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