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【*pixiv +Twitterログ】無印はsiteのみ。左の記号が目印。今後の予定は【予定表】を参考にお願いします。
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合縁奇縁と申しませども世は流れ流れて当て知らず
数奇で奇妙な縁の下で出会い惹かれた二人の男。
片や町奉行所役人、名を東方仗助、年の頃十と六。
片や売れっ子浮世絵師、名を岸辺露伴、年を二十と語る。
互いが出会うのは運命と、誰が言ったか知らないが
初見良好と言えば去にあらず…。
さあさあ御立会い。
時代絵巻の開演と相成りませば
その指添えて一捲り、夢物語を始めましょうぞ。
【逢魔時】
時は某年、場は北の地、奥州が中心、名を杜王。
古来より物の怪、妖怪、妖モノなど薄気味、不気味と囁かれるも住めば都とも申します。
時の殿様の力もあり開拓、開墾、国づくり、杜王町は活気盛りに満ち溢れておりました。
そんな町の片隅にある町奉行所の一室で頭を抱える一人の男、
まだまだ駆け出し中の新人、東方仗助は今自分、もっとも苦手とする仕事をどうするか
悩んでいる真っ最中であった。
「んんー~…やっぱり今月も出やがったのかぁ…これで三月連続かよぉ~…;」
手元の書物帳には自分が読めるだけの言葉で書かれた報告内容。
場所や時刻はバラバラであるにも関わらず大筋に纏めて原因は一つと明白
ならば何故悩む必要があるとも思えるが、問題は報告内容の中身にあった。
【一、ニ月前の子の刻夜半過ぎ。酒屋帰りの商人連中五人。
そののうち二人が得体知れぬ影を見たという。
一人は髪を簾た若い女の幽霊、しばしの間、
恨めしそうに見つめていたが途端フッと消えてしまった。
一人は人丈の半分もいかぬ背の小鬼の群れ、
およそ人語とは異なる言葉を飛び交わせ、ざわつき走り去った。
ニ、一月前の雨あがりの夜中猪の刻。夜泣きの子を寝かしつける為、
夜道を散歩中の奥方の前に白い着物を纏った
若侍の幽霊が現れ、恨めしそうに此方を見つめていたが
腰を抜かして動けなくなってしまい
どうにも出来ずに震える奥方をすり抜け消えてしまった。
三、当月が五日前の丑の刻。勤め帰りの南奉行所役人三方が
役場を出て帰路につこうとした時の事。
雑談混じりの足が三つ同じにして止まり、
目の前に黒々とした身丈以上の壁が現れたという。
はて昼過ぎ、ここに壁は無かったが…と顔を見合わせつつ
触れてみると生暖かく、ごわつく毛が触れ、気味悪さに叫び飛び退くと
壁はゆっくりと動きやるかと思いきやそれは大きな女の顔であった。
腰の抜けてしまった輩、声にならぬ者、刀を振りかざす一人、
それぞれを見やると顔はニタリと笑い闇に消えた。 以上】
一見すれば、何やら馬鹿馬鹿しくも滑稽、
井戸端の話種や落語一席の余興としては面白いかも知れない内容ばかり。
全てが現し世にあるはずのないような鬼鬼妖妖なものであるにも関わらず、
奉行所が腰を上げたのは、その報告件数だった。
「国分寺通りにて三件、中町通りにて四件、…げげっ…俺ン家の近くでも…;」
今し方書き留められた三件は一部に過ぎず、
この他に細々したものを加えると一ヶ月に大凡十から十五。
それが三月連続ともなれば報告は五十を超えるまでになっていた。
これでは瞑っていた目玉もこじ開くというものだ。
ひのふのみ、、、
改めて内容と件数を数えていく
仗助の顔色は思わしくなく、最後には決まって暗い溜息を漏らした。
「なんだってんだ…今季節は夏でも無けりゃ盆でも彼岸でもねぇーんだぞ;
俺は何が悲しくてイマイチ不得意なバケモノ調査に乗り出さなきゃならねーんだ;」
イマイチとは言ったが本音は大の数が足らないほど仗助は幽霊、物の怪、妖怪の類が苦手だった。
正体の知れないものに薄気味悪さを覚えたのはいつの頃からだっただろうか覚えは怪しいが、
どうにも背筋にイヤなものが走って仕方がなかった事は覚えている、生理的に受け付けないらしかった。
「なんだい、一行も進んでないじゃないか;」
「うわぁっ……っ!!」
肘あぐらに片手で頁を捲っていた時、背後から声に思わず上げた情けない声。
書物机に両手を付き、視線だけで其方を見やると、肩越しに覗き込んでいた人物が苦笑いを浮かべていた。
「ごめん、ごめん、驚かすつもりは無かったんだけど…//;
どうだい、調査報告は纏めて読み終わったのかい?」
「なんだ康一かぁ~…あー…んー…大体は…。」
気の抜けた仗助は浮いたように唸り、また頁を適当に捲り答えた。
その様子に、どうやら読みはしたが、ますますやる気が
そげ落ちていったのだろうと康一は察し、隣に正座で腰を下ろした。
「新人とは言え苦手分野を押し付けられたものだね、仗助君。
僕も報告書の纏めを読んだけど、目撃者に共通点もなさそうだし場所も一定じゃ無いみたいだ」
「そうだなぁ~…皆に言える事は全員が真夜中に遭遇してるってことぐらいか…。
まぁー昼間に出る妖怪やら幽霊が居るはずもねぇーけどよぉ~…」
康一は仗助と同じ奉行所に勤める同僚でもあり、頼り甲斐のある親友でもあった。
生来の真面目気質で仕事も丁寧、気も効くと三拍子揃った出来た奴。
一歩違った観点から捉える物の見方と人に伝える会話力、役人になるために生まれてきたような奴だと
評判は文字通りの太鼓判だった。
「それもそうだ、幽霊妖怪は丑三つ時ってのが相場だろう?
昼時にそんな類が歩いていたらそれはチンドン屋か見世物屋って言われるね、きっと。」
「それならどんだけ平和的に話が纏められるかしれねぇーな…//;」
康一の言葉に状況を思い浮かべ、仗助は軽く笑ってみせると
捲っていた報告書を閉じ、一度思い切り背を伸ばして見せた。
じっと文字とにらめっこを続けていたせいで身体が縮こまっちまっている。
仗助はこういう物書き仕事は余り得意では無かった。
武家の生まれである仗助に幼い頃から父はおらず、ずっと祖父の背中を見て育ってきた。
祖父は町の治安を守る役人で、その姿は仗助の目にとても格好良く映っていた。
いつか自分も祖父のような人間になりたい、自分の暮らす杜王を祖父と同じように守りたいと
心に思う一心で役人試験に合格し、今は町奉行所勤めをするまでになった。
自分に与えられた仕事には誇りを持っている…とはいえ、人間相手じゃないとなると勝手が違ってくるというもの…。
このくらいの事件ならば俺に任せてくれて大丈夫と判断され、話が回ってきたのだろうが
上役や兄役が此方の内心、事情を知るはずも無い…いいや、知られては奉行所内者の笑い話の種になるだろう。
「それでだ、仗助君、僕に一つ提案があるんだ。
百聞は一見に如かずという言葉もあるくらいだし、報告書じゃわからないこともある。
一度、その場所を見に行ってみるというのはどうだい?」
「それは俺も考えた…けどよぉー、真夜中に出ると言う場所を出歩くのは流石に気が引けるぜ;」
悩んだ様子で答える仗助に康一は尚も食い下がった。
その表情は余裕をも醸し出している。
「なにも真夜中に行こうって言ってるんじゃあないよ、日の高い今から行こう。
同時刻に行っても連中さんに会えるとは思えないし、何か条件もあるかもしれない。
それに、明るいうちに現場を見ておけば何か新たな発見もあるかもしれないだろう?
他に下町歩きに強い助っ人にも話はついているよ、心強い助っ人がね」
康一の担当は杜王の地形地理調査、
頭の中に大体の地図が入っていると言ってもいいほど道には詳しかった。
そんな専門家が一押しする心強い助っ人とは一体誰だろうと思いつつ、
仗助は此処で一度気持ちを切り替えてみようと思った。
昼なら物の怪、妖怪共は出て来れない、出てきたとしても人前おいそれとは暴れないだろう…。
明るいうちに現場を見ておくのも一理ある、と大きく頷いてみせた。
「そうだな、ここでうだうだ帳面と睨み合ってるのは性に合わねぇーし
体動かせば何か見えてくるかもしれねーよな、康一。」
「そうだよ、そっちの方が仗助君らしくて僕は好きだ。
ちょうど町に用事もあるし、僕も御一緒させてもらうよ、いい気分転換だ。」
「おう、そんじゃ散歩がてら出かけますかねぇー」
屈託の無い康一の笑顔に
弛れた心は励まされて軽くなり、溜息も消えていた。
気乗りはしないが動かねば始まらない、と、
外羽織を手にした仗助は康一と共に部屋を出たのであった。
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