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【*pixiv +Twitterログ】無印はsiteのみ。左の記号が目印。今後の予定は【予定表】を参考にお願いします。
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【カム・フラージュ】
日も傾き始めた杜王町の駅前、行き交う帰宅途中の
サラリーマンや学生たちでごった返している中
駅前のバスターミナルで僕、岸辺露伴は人を待っていた。
携帯電話を片手にメールを打つように見せてはいるが、
実際は人払い出あるため内容など無い打つフリ。
これでも傍からは用事を済ませているように映るだろう。
程なくして僕の携帯に着信が入り、着いたとの一言に顔を上げ辺を見渡すと
運転席から此方を見ている人物を見つけ電話を切った。
「それでよぉ~、A組の奴がさぁー仗助~」
「分かったから少しボリューム落とせって、億泰~;」
「だってよぉ~ー…ん、あれ露伴先生じゃねぇ~か?」
去り際、そんな聞きなれた奴らの声を耳にした僕だったが
振り返りもせず目の前の乗用車へと足を走らせた。
今は下校時間中、時間帯的にぶつかったろうが別に珍しい事でもないし僕には関係ない。
ガチャリ、と助手席側のドアを開けて乗り込むと
場を察したのか運転席の人物は何も言わずに車を発車させ、人混む駅前を後にした。
暫く走ったところで見慣れた交差点の信号に捕まり、車が停車した時、漸く相手が口を開いた。
「声を掛けなくて良かったのか…?」
「何がです、承太郎さん」
どうせ此方を見てやしないと知っていた僕は車外の風景に視線を向けながら答えた。
運転席でハンドルを握る空条承太郎という人物、職業は冒険家だという。
杜王町で起きた殺人事件の調査中に知り合い、縁あって話す機会をもったが
あのクソッタレ東方仗助の甥っ子だと聞いた時は半ば信じられなかった。
言われれば確かに顔立ちは似ているし互いに日本人離れした体格だ、
甥叔父と言わなければ兄弟だと言っても通じるだろう。
事件解決後の今も財団の指示の元、こうして事件後の処理やら調査やらで一定期間杜王町を訪れているらしい。
「別に呼び止められたわけでもないし、僕にはアイツらに用事も無い。
それなのに声をかけるのも変じゃありませんか、そうでしょう?」
話さない相手の変わりに僕が言葉を続けると、
答えの変わりか或いはタイミングか、車がゆっくりと走り始めた。
一定のスピードで車は走り続け、次の角を曲がればもう僕の家は目の前だというのに
車線は変更され、全く別の道を走り始めた。
「少し遠回りする」
「どういうつもりです、僕は良いとは言っていない」
「たまには俺にも付き合えよ、露伴先生」
ハンドルを切る横顔を睨みつけて見せるが相手はお構いなしとばかりに運転を続ける。
別に遠回りに怒っているんじゃあ無い、運転しているのは彼だ、そこは従おう。
ただ一つ、よく似たトーンで名前を呼ばれた事に腹がたったんだ。
車外の風景は流れに流れて、いつしか海岸線へ景色を変えていた。
相変わらず会話も無いまま承太郎さんの運転する助手席に納まったまま
どのくらい経ったか…疲れからか僕は一時眠りこけてしまった。
……………
「それでよぉ~、そん時の承太郎さんったらもう、カッぴょイーのなんのって//!」
満面の笑顔、興奮しつつも饒舌に自分の見た勇姿を語る口。
吉良吉影が起こした一連の事件にもカタがつき、
今回の一番の功労者である東方仗助の回復を待って僕は食事を御馳走すると家へ招いた。
ハイウェイスター戦でも共戦ではあったが結果的には助けられたのは事実、
貸し借りを嫌う僕の性格上、こうでもしなけりゃ気が済まない。
「この前も一緒に海へ行って色々話したんスけどー」
しかし、目の前の奴はどうだ
食べる以外、口を開けば同じ人物の話題ばかりじゃあないか。
確かに仗助が言う空条承太郎という人物は魅力的な男だ。
容姿端麗で頭脳明晰、なにものにも屈指しない勇敢、勇気、
まるでアニメや漫画に登場するヒーローそのもの、それこそ誰もが目を奪われる程に…。
僕もその例外では無かったが資料収集的好奇心以外、特別な感情は無かった。
「なぁ、俺の話聞いてます、露伴センセー?」
自分でも理解し難いこのむかっ腹のたちようは何だろうか…。
食事に招いたのは僕の勝手、来たのはコイツの勝手。
だが、それにしたってどうなんだよ、そのデリカシーの無さ。
承太郎さん、承太郎さんと…もっと別の話題もあるだろう。
「あぁ、聞いている」
「んだよぉーそれなら相槌くらいしてくれてもいいじゃん…あ、そうそう!」
そう言うと、また何か話したい話題を思い出したらしく
仗助はまた空条承太郎を語り始めやがった。
うんざり…そう思い始めようとした時、僕の意識が囁いた。
同じように視点に立ってみろ、仗助が語る空条承太郎に興味を持ってみろ…と。
暑苦しいほどの憧れを言葉にし、
押し付けがましい程語られて後は何を僕に知れと言うんだ?
フン、面白いじゃあないか。
お前がそれほど熱狂する空条承太郎という人物
彼の隣に僕がいたら、お前は一体どういう顔をするんだろうか
見てみたい、その熱を掻き回してみたい。
僕の好奇心に火がついた瞬間だった。
……………………………………
「着いたぞ、露伴先生」
低くとも耳に良く響く声に僕は目を覚ました。
首にやや食い込んだシートベルトに手を掛け、いまだ寝ぼける目を擦り見れば
視界がやけに開けた場所だと認識を持った。
「ここは…僕の家じゃあ無い」
声をかけた運転席に既に人は無く、かわりに目の前のフロントガラスを通る姿。
それを視線で追いかけながら僕が車から降りると強い風が僕の顔に吹き付けてきた。
夕暮れに染まる水平線、茜色の雲とグラデーションを奏でる空。
自然が作り出すコントラストは何度出会っても姿を変えて楽しませてくれる。
海風の中、景色を眺めていると再び視界に彼が映り、僕は歩き始めた。
歩幅を合わせてくれているのか幾分遅くなった足取りを追い、砂浜へと下りると
それはより広く僕の目の前に現れてみせた。
「こんな場所に連れてきて、一体どういうつもりですか」
前を歩く背中に声をかけると、漸くその足が止まり
両ポケットへ手を突っこんだまま海を眺め始めた。
白いロングコートのような上着が海風に靡いてシルエットを揺らしてみせる。
「いや、意味は無い。俺は考え事があると海に来るようにしている」
「…」
簡潔な言葉に返す言葉も無く、広い彼の背中から
目の前の海に視界を移せば、果てしなく遠い水平線。
美しくて途方も無く儚げ…姿を変える様は飽きないが
移ろう一瞬、どこか虚しささえ漂っているように見えた。
僕は彼を様々な場面に呼び出し、付き添いをしてくれるようにと申し出た。
出版社主催のパーティ、食事会、取材帰りの送迎、それも待ち合わせは決まって夕暮れの人通りの多い夕方の駅前。
知人が通るかもしれない、人目を引く時間帯を狙って…。
捕まる時はそれこそ、相手の都合も考えずに呼び出していたというのに
彼は何も言わずに付き合ってくれていたが…
腹の中に何を思っているか怖いと思ったこともあった。
じきに日が沈む。
少し肌寒くなってきたなと思っていると
彼の顔が此方を向いて僕を見ていた。
「俺と居て満足か、露伴先生」
不意に投げられた言葉に一瞬、何を言われているか分からなかったが
答えを返さない僕に、彼は話を続ける
「アンタが俺を利用しているのは知っていた。
人目につくような見せつける態度や、わざと聞かせるような会話に
最初はどういうつもりかとも思ったが、俺は最後まで見届けてやるつもりでいた」
やはりこの人には全てバレていたのか、しかし同時に安心した。
かえって気が楽になったというもの…端から悪気も無かったがな。
そう思えたら急に可笑しくなって笑いを堪えきれなくなった。
急に声を出して笑う僕を彼は黙って眺めていたので
そろそろ本音を暴露してもいいかと口を開いた。
「だとしたら承太郎さん、あなたは見かけによらず随分なお人好しと言える。
何故、僕がアナタ自身に興味も無いのにアナタはわざわざ付き合っていたのか、その気がしれない」
腹を抱えて笑い言う僕を見据えつつ、
彼は身体を此方に向けてみせると顔色一つ変えずに言ってのけた。
「その台詞、そっくりそのまま返すぜ露伴先生。」
放たれた言葉に途端、そいつらが背筋を這い上がっていく思いがした。
先程までの可笑しくて堪らない感覚は姿を消し、
かわりに辺には波の音だけが打ち寄せ鳴っていた
「俺はアンタに付き合っていたわけじゃあ無ぇ、アンタの隠してる奴に付き合ってやったまでだ。」
強く美しい瞳から視線がそらせない、放つ言葉は矢のように僕を射抜く。
僕にとってこんな感覚は初めての経験だ。
「どういう意味です…」
「それは俺の口から言うわけにはいかねぇーな。
なによりそれはアンタが一番よく分かってんだろう…」
随分不相応な相手を選んでしまったんだな、と、僕はこの時初めて後悔した。
漸く反らすことの出来た目を伏せて薄く口元で笑ってみせた。
とてもこの人には敵いそうにない。
「全くアナタは最低だ…裏の裏まで読んで尚も黙っていやがったなんざぁ…」
「たまにはガキの遊びに付き合ってやっても面白い…こんな風にな。」
いつの間にか目の前までやってきた相手の体に視界が影を落とした刹那
強く引かれた腕の向かうままに僕の身体は引きを寄せられた。
吐息、呼吸がかかる距離まで近づいた顔にドキリと心臓が大きく脈打つ。
「もし俺が何も知らずにアンタに本気だと言ったら、アンタはどう出るんだ…露伴先生」
甘く耳を犯すような声に呼吸さえ止まる思いがする。
全てを知った上で僕を揶揄っていると理解しているというのに
喉奥が震えて声が上手く発せやしない…空気を噛むばかりの僕に
追い打ちをかけるように彼は言い放った。
「嘘も大概にしろ、でなけりゃ本当に大切なものさえ嘘になっちまうぜ」
承知している事を言われると人間は怒りを覚える
それが的を射ていれば尚のこと…。
「本当に、あなたは最低だ」
互いに心なんて無かったくせにと唇を噛んだ僕には
そう返すのが精一杯だった。
…………………………………
すっかり日も暮れ、空には星が輝き始めた頃、漸く僕は家へと送り届けられた。
送ってもらった礼をいう僕に彼は珍しく微笑んでみせ、車を出した。
テールランプを見送る事も無く、家へと入った僕はそのまま寝室へと向かい
着るも着のままベッドへと身を投げた。
身体がひどく重い、全身が泥に沈んでいくかのような倦怠感の中で目を閉じると
思い出されるのは夕暮れに見た彼の顔だった。
『嘘も大概にしろ、でなけりゃ本当に大切なものさえ嘘になっちまうぜ』
「偉そうに言いやがって…。」
いまだ耳に残る声を紛らわすように枕へ顔を埋めて息を吐けば、また光景は巡りやがる。
あの後にどうにかなることを期待していたわけじゃあ無い。
踊らせているつもりでいたはずが逆に踊らされていたのは僕だったのだと自覚した時
どうしようもない恥ずかしさと切なさが夕暮れに聞いた波音のように唯唯寄せては返すばかりだった。
………………
「関心しないな、承太郎」
助手席でやや不機嫌そうに呟く声に、俺はフッと息をもらした。
岸辺露伴を家まで送った後、タイミングを見計らったように着信が入り、応答に出た。
それは駅前にいるから拾ってくれないかというもので、俺はそのまま駅前に向かい相手を乗せた。
「君らしくないじゃないか…人を揶揄うなんてさ」
「やきもち…ってヤツか、花京院」
口調は穏やかそのものだってのに、うらには刺々しい思いが見え隠れしている。
今回、スピードワゴン財団の調査に駆り出されたのはてっきり自分だけかと思っていたが
途中参加で花京院典明も同行すると聞いたのは俺が杜王町に来てから暫く経ってからだった。
「そうかもしれないし、違うとも言える。
第三者の僕から見れば、どちらの言い分もわかる気がすると言えるからね。」
俺は大筋の話を花京院には説明していた。
予測に過ぎなかった岸辺露伴が俺に声をかけた理由、
その原因となったであろう東方仗助の話、少々の周辺調査…。
全くもってガキの戯れでしかないと溜息をついた事も。
「露伴先生は自分が招いたのに君の話しかしない仗助君に腹を立てて仕返しのつもり…。
仗助君は露伴先生を退屈させたくなかったから君の話をしただけなのに逆効果、
互いに素直じゃないんだからさ…君が守りたかったのは仗助君だろう、承太郎」
「アイツは素直で真っ直ぐだ、それが良いところでもあるが悪いところでもある。
一応これでも俺は甥っ子だからな…俺なりのアドバイスを送ったまでだ」
「随分遠回りなアドバイスだ…」
ウィンカーを上げ、右折すればもうすぐ杜王グランドホテルが見えてくる。
調査は後数日で終了し、俺達はこの杜王町を離れなければならない。
もう岸辺露伴から呼び出しが来ることはないだろう、これに懲りないほど馬鹿では無いからだ。
面白い厄介事だったぜ…と、俺は声に出さずに笑ってみせたのだった。
【END】
………………………
仕事中に、これ書きたいと思い書いた承露でした。
仗助君の態度にムカついた露伴先生がそれを奪う、または掻き乱してやろうと
承太郎さんに近付いてみましたが…承太郎さんには全部分かってたという話でした。
承太郎さんにすれば露伴先生だってまだまだ子供と言えてしまうんじゃあないかなー…。
このお話では典明君は生存していて、承太郎の良き相棒?恋人?しててくれたら良いなと思ってます。
しかし、くさいセリフさえカッコ良くなっていしまう不思議(*´д`*)
ありがとうございました。
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